連載 老人虐待―米国からの報告・4
問題解決へのアプローチ
江原 勝幸
pp.881-886
発行日 1997年12月15日
Published Date 1997/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688902447
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ソーシャルワークの伝統的な介入方法は,個人の内的問題に焦点を当てる医学モデルをベースに発展しました.その後,家族,関係する人々,そして社会的環境との相互関係にに注目する生態学的方法論が1960年代にソーシャルワークに導入され,ソーシャルワーク援助技術の最も有効なアプローチの1つ―システム理論―として1980年代に入って広まりました.特にシステム理論を発展させた,「人」とその身体的・社会的「環境」関係間の機能不全問題(DysfunctionalTransaction)に注目して問題解決を図るエコロジカルアプローチ(Ecological Approach)は,複雑な家庭問題を根底にする老人虐待の問題介入及び問題解決を考えるうえで非常に効果的なものと言えます.
身体・精神機能低下に伴なうお年寄りの家族・社会への依存性の高まり,インフォーマルサポートシステムの弱体化,家族関係の歴史とそのパターンの変化など,人と環境との不均衡は虐待問題に限らずさまざまな問題をお年寄に引き起こします.単に個人的なものだけを注目してしまうとその問題の一面でしか把握できません.虐待問題は家族システムや社会的システム関係での問題でもあることを次の事例で考えてみましょう.
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