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はじめに
医療を取り巻く環境の変化を受けた,病院におけるクリニカルパスの必要性とその効用については,すでに周知のことである。成果(アウトカム)を重視するこの方法は,プロセスを重視したかつての医療展開と比較してみれば,180度の変化である。医療における質の向上と標準化,根拠に基づく医療(evidence based medicine:EBM),情報開示,インフォームド・コンセントなどの考え方は,まさしく成果責任医療の流れを受けるものであり,今日では一層の必要性が強調されている。
医療におけるこうした流れは,地域ケア・在宅ケアの推進に向けた受け皿の整備と1つの連鎖をなしている。
施設から地域,地域から施設と,その連携と協働性は確立されたかに思われる。しかし,昨今の連携症例数の多さや調整内容の複雑化は,質の保証に影響を与える要因として見逃せない。特に,地域では多くの職種が関与するため,成果に対する評価やフィードバックが重要になる。これらがどのような尺度や規準で評価されれば,症例が複雑化・多様化の一途をたどっている現状に対応できるのかという,具体的な展開における課題も見え隠れする。
本稿では,在宅ケアの質保証に関して,クリニカルパスの視点から検討していく。たとえば在宅ケアにあっては,現状維持というゴール設定もあり得る。こうした場合,クリニカルパスはどのように使用できるのか,あるいは単に「クリニカルパス的」な発想や活用に終わらざるをえないのかなど,在宅ケアにおいてクリニカルパスを活用することの是非やその意味について考えることは重要と思われる。
そこで筆者は,クリニカルパスの意義・効用を念頭に置きつつ,地域や在宅ケアの場におけるクリニカルパスの展開は可能か否か,また可能にするための課題は何かを考察してみたい。
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