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はじめに
医療機関は患者中心の医療を実践するためにチーム医療や地域医療連携のなかで情報の共有を行ない,質の高い医療を提供すべく努力しています。そして,特定業務の職員に課せられる守秘義務を主体に患者の個人情報を保護してきましたが,2005(平成17)年4月1日に個人情報保護法(以下,法と略す)が全面施行となり,各施設がプライバシーポリシーを作成し,患者やその家族に明示することが厚生労働省のガイドラインで求められました。特に個人情報の目的外利用と第三者提供は原則禁止になり,外来総合窓口での応対マニュアルや電話での患者家族,親戚などへの応対マニュアル作成が必須となりました。
また近年,診療報酬の改定により地域医療連携が医業経営のキーワードとなり,病院と診療所の間で個人情報の交換が頻繁に行なわれ,それが連携を支えてきました。さらにはセカンドオピニオンなど個の医療を推進する目的で,個人情報が多くの医療人の目に触れ,活用されてきました。しかし,法が全面施行になったことで,チーム医療の範囲外への個人情報の提供には特別な配慮が必要になりました。
現代のチーム医療の中では患者・家族と医療スタッフのコミュニケーションが重要視されています。患者の個人情報を迅速かつ正確に共有することが患者の意思決定を支援し,医療の質を保つために必要です。さらに,法を適切に運用することで医療面接の場面において適切な話し相手と良好なコミュニケーションを行なえることが期待されます。
しかし,法を順守しようとするあまり,家族を含めたチーム医療間でのコミュニケーションが阻害されないようにすべきです。ましてや,大事故や災害時にみられた,病院が電話での安否確認を拒否した事例などのように,法をコミュニケーション遮断のツールとして用いてはなりません。患者・家族と医療従事者間での重要なコミュニケーションが円滑に行なわれるようにし,信頼関係・協力関係を築こうとする配慮が必要となります。
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