特集 よい質的研究論文を発表するために—セミナー「How to Peer Review and Publish Qualitative Papers」より
研究者,査読者,編集委員,編集委員長のためのセミナー開催の意図—よい質的研究論文を発表するために
萱間 真美
1
1聖路加国際大学大学院看護学研究科
pp.88-91
発行日 2019年4月15日
Published Date 2019/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201609
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質的研究の査読をめぐる状況の変化
かつて,量的研究VS質的研究という対立の図式があった。量的研究という言葉は,伝統的な科学の手法であり,確立された方法論をもっているという意味で使われていた。それに対して質的研究は,現象を記述し,概念化し,理論化するために不可欠な方法だけれど,新参者であり,評価が定まっておらず,科学的でないという差別を受けがちであるという意味をもっていた。量VS質という対立軸が明確で,質的研究方法を用いる研究者で連帯し,団結して市民権を得ようと頑張った時代があった。質的研究をデータに基づいた科学的な論文として認める人は,それだけで味方であり,身内であった。そこには「量的研究者と比較して」という条件つきで,相対的に,という前置きがあるのだが,それはいったん脇に置かれていた。
2者の対立において,質的研究をする人たちというのは,味方の集団に属していた。質的研究の中でも科学観は多様で,現象をどのように捉えるかという立場は異なっており,学んできた方法論も異なる。しかし,量VS質のような大きな対立軸の前に,そのような違いは相対的に些細なことと捉えられていた。質的研究を認める人であればわかってくれるはずであり,わかってくれて当たり前であると思っていた。
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