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ヘルスケアにかかわるすべての人にお勧めしたい
本書を開いて最初に目を引くのは、第1章として「医療は誰のものか」で始まることである。“まずヒポクラテスから始まる”というイメージがある一般的な医学・医療概論とは違うという印象をもった。そこでは、人道主義、患者の権利、倫理などに続いて、「人の気持ちを慮ることの大切さ」について著者らのユニークかつ重みのある体験が語られている。たとえば、産婦人科医である著者の1人(男性)が、若いときに患者の気持ちになってみようと、分娩台に上がってみた(下着をつけずに!)という記述がある。このように、医療職にとって最も大事なものはなにかを理解するための哲学的な問いが、頭でだけ考えたものではない描写で随所にあらわれている。同様に、第2章は「健康とは何だろうか」をテーマに、well-being について身体的・社会的・精神的な視点から、地に足の着いた解説がされている。
第3章は、医療の誕生から現在そして未来への展望が、最先端の医療技術の課題などについて「全人的医療」をキーワードに解説されている。環境汚染による健康被害(水俣病、四日市喘息など)の歴史は、医療者としてしっかりと認識しておくべき課題であるが、その記述も充実している。さらに近代社会における人類最大の健康課題とされてきた感染症対策として、ペストやコレラそして天然痘、結核についてその発生から終息に至る経緯がわかりやすくまとめられ、エイズ(薬害エイズ問題を含む)や重症急性呼吸器症候群(SARS)に関しては、グローバル感染症として国際協調体制の構築が強調されている。この書評を書いている今、新型コロナウイルスによる感染がパンデミックとなり、日本でも感染者が出てさまざまなイベントが中止となっている。「見えない敵」との闘いは、人々を不安に陥れるのみならず、生活の基盤である経済に大打撃を与える。感染症対策の国際的強化のみならず、社会や経済への影響を最小限にする努力が求められていることを、学んでおく必要がある。
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