第2特集 看護学生論文─入選エッセイ・論文の発表
エッセイ部門
なりたい私
三浦 仁美
1
1独立行政法人国立病院機構高知病院附属看護学校3年
pp.692-693
発行日 2013年8月25日
Published Date 2013/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102471
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私は理由もきっかけもあまりよく覚えていないが,物心つく前から看護師になりたいという夢があった。しかし,そのあいまいな動機から看護師になりたいという明確な動機へと変わった出来事がある。
小学生の頃,祖母が癌で亡くなった。祖母が病気だということはうすうすわかっていたが,まだ私は幼く,“癌”という病気も知らなければ,祖母と家族がその病と5年も前から闘っていたことも知らなかった。私たち家族は田舎に住んでおり,祖母が治療を受けるには片道2時間かかる距離にある町の病院に入院しなければならなかった。私は祖母の息子にあたる父と2人でお見舞いに行った帰り,たわいもない話をしていたか,はたまた寝ていたのか記憶はおぼろげだが,次の瞬間からの記憶は鮮明に覚えている。父は車を道路の脇に停め,神妙な面持ちで話し始めた。「おばあちゃん,もう長くないみたいながよ。仁美は長女やき話しちょこうと思うて」。父の泣く姿も震える声も,死というものをリアルに感じたのもこれが初めてであった。
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