読者の声
ある日曜日
片野 竹代
pp.60
発行日 1955年6月10日
Published Date 1955/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200973
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日曜日だと思うとつい気がゆるんで,少し寝坊したなと思い乍ら,正枝は縁側のガラス戸を大きくあけ放すと雨のあがつた青空がやさしく顔をむけていた.正枝は二,三回深呼吸してふと向いの家を見ると,妹娘の今年中学生になつた清子が何か元気なさ相に窓によりかかつていたが,正枝を見ると,つと,体をおこした.そしてすぐに申し訳程の両家の仕切りになつている低い垣根の戸を押して正枝の傍にやつて来た.
正枝は村の保健婦で日頃忙がしく過しているのでめつたに清子と顔を合せることもなかつたが,両親がなく姉夫婦に育てられている清子を小さい時から可愛いがつていたのであつた.
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