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水たまり
pp.5
発行日 1954年4月10日
Published Date 1954/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200709
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雨あがりの道路に出れば,アスフアルトの道路といわず,じやり道といわず,横丁の細い路は云うに及ばずそこここ水たまりが出現するのは日本の特徴の一つであろう.勢よく走つて来る自動車は,何のちゆうちよ会釈もなくこの水たまりの中にとびこんで,左右一間程はすさまじい水しぶきをあげてくれる.長靴でよちよち歩いているものこそ大した迷わくな訳である.外国の人の話しによれば,日本みたいに,道路の不良な文明国(?)東京みたいに,道路のお粗末な大都会はないそうであるが,まことにその通りかもしれない.外国製の大型自動車などは,メインストリートならともかく.住宅街の横道などに入ろうとすれば,人も自転車も立往生してお通りをまたなくてはならないし,下手をすれば,とても入れなくて,折角の乗客は,そこからしばらくテクらなくてはならない破目と相成る.全く何とか注意されないものであろうか.日本には,もう一つ水たまりの特徴がある.それは病院のどまんなか,手術室の床にある.地磐の惡い土地に建てた病院の場合,建築工事の拙劣,床の斜面のきり方の不適格等の理由もあるかと思うが,何時,何処の病院にいつてみてもまず,殆ど例外なくといつてよい程に手術室の床には,水たまりがあり,或は一面に水がビショビショになつている.
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