手のひらで知る世界・2
くちなしの花
石井 康子
pp.184-186
発行日 1979年2月1日
Published Date 1979/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918608
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手話の世界
一晩中,燃えさかった火の粉が鳥取駅から4駅も離れた私の村の空まで赤くこがした鳥取大火があったのは,昭和27年4月だった.だから昭和30年に私が県立ろう学校に入った時は,学校も,そして私の生活の場となった県立児童福祉施設積善学園も大火の後,鉄筋コンクリートで新しく建てられて間がなかった.ろう学校のすぐ隣には鳥取大学があり,そのあたり一帯は,広い広い田園が広がり,少し歩くと袋川の河原が続く.そして久松山(きゅうしょうざん)が静かに連なっていた.
どんないきさつでろう学校に入ることになったかというと,そのころ,ろう学校と同じ敷地内にある盲学校に勤めていた村のお寺の住職と私の父が話したかどうかして入学することになったらしく,何が何だか分からぬまま大きな布団袋と一緒に積善学園に入ってしまい,そこから,すぐそばのろう学校に通うようになった.
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