ストレスと病気・8
ストレスと感覚器系
矢野 純
1
,
矢野 真知子
2
1東京大医学部付属病院・耳鼻咽喉科
2東京大医学部付属病院・眼科
pp.1245-1248
発行日 1975年12月1日
Published Date 1975/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917397
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ストレスと感覚器
感覚器とストレスの関係を考える場合,次のような感覚器の機能の特異性を忘れてはならない.第1に,感覚器はストレスの受容器である(表1).騒音・悪臭は,おのおの耳・鼻の聴覚器・嗅覚器により受容され,中枢に至り,それと認知され,自律神経系・内分泌系に影響を与える.また,対人関係のような心理的ストレスも,相手の表情を見たり,その声を聞くことなしには成立しない.
第2に,ある音を特定の器物の音として,また人の声として,あるいは音楽として知覚したり,ある物を見たとき,‘バラの花’として,あるいは‘隣の山田さん’として認めたりする過程は,心理そのものであり,感覚器系の機能は,本来,生理学的側面と心理学的側面の2面性を有している.それゆえに,感覚は心理的ストレスにより影響されやすい.不眠のとき,朝の小鳥のさえずりは騒音として聞こえ,心地よい目覚めのときの同じ小鳥のさえずりは天上の音楽として聞こえることは,だれもが経験しているはずである.
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