連載 買いたい新書
—奥川幸子著—未知との遭遇 癒しとしての面接
若林 チヒロ
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1東京大学医学部保健社会学教室
pp.896-897
発行日 1997年9月1日
Published Date 1997/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905434
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患者の言葉を“聴く”ことは本来とても恐ろしいこと
「未知との遭遇」,書名を一見しただけでは,いったい何の本なの?と思うが,この本,医療ソーシャルワーカーの面接技法について書かれたものである.長年老人医療の現場でソーシャルワーカーとして働き,最近は新人ワーカーの育成にもかかわっているという著者が,相談援助をする際に患者の立場や言葉を理解する技術について書いたものである.
脳梗塞で倒れたのち家族との関係を立て直すことで回復していく男性,退院したのち老人ホームに入ることを決めていくプロセスでの周囲とのやりとりなど,疾病への対処だけでなく,疾病に伴う心理的,社会的な生活変化に対処する患者を支援する事例が次々と紹介されている.著者は,ソーシャルワーカーとして利用できる制度をただ提示するのではなく、患者が真に求めているものは何なのか,患者にとってどんな支援か適切なのかを見抜きながら相談にのるのだが,その際,患者の発する言葉をただうのみにするのではなく,患者の人間関係や価値観など心理・社会的な状況をおさえつつ,そのなかで発せられている言葉として受け止めていく.そして医療者である自分との関係性において語られた言葉であることを客観的にとらえながら、聴くことの重要性について述べている.
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