心悸亢進・動悸

はじめに

　妊婦外来において，私どもはしばしば，心悸亢進，動悸などの訴えを有する妊婦に遭遇するが，これらの症状は，重要な問題をもつ妊産婦の心疾患診断の契機となる場合も少なくないので，このような訴えをもつ妊婦の取り扱いについて考えてみたい．

　一般に心悸亢進が主訴となりやすい疾患としては，先天性および後天性の各種の心弁膜症，高血圧性心臓病，各種の不整脈，心神経症，仰臥位低血圧症候群などの循環器疾患，また循環系以外の障害によるものとしては，甲状腺機能亢進症，貧血，急性出血，発熱，肺疾患などがあるが，これらのうちで，特に妊娠と関係のある，あるいは妊婦がよく訴えをもってくる心疾患の取り扱いについて2〜3とりあげてみたい．