対症看護講座 呼吸器症状と循環器症状
妊婦の呼吸とその障害
百瀬 和夫
1
1東邦大学産婦人科
pp.10-13
発行日 1966年3月1日
Published Date 1966/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203140
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A.妊婦における呼吸の特徴
1.妊娠による上気道の変化
妊娠すると性器だけでなく,全身の器官にさまざまの変化を生ずる.多くはこれによって日常生活が障害されるほど強くはないが,なかには病的状態と区別できないくらい激しい症状を呈することもある.呼吸器系も例外ではなく,いろいろな変化がみられる.俗に妊娠中のかぜはなおりにくいといわれるのもその一つのあらわれであろう.
妊娠中の上気道の変化としては,鼻—咽頭—喉頭の粘膜に肥厚,充血,浮腫が起こる.これは黄体ホルモンの直接作用のほか,妊娠にともなう全身の浮腫傾向と関連するものとされている.鼻粘膜の充血肥厚によって鼻閉,鼻呼吸の障害,鼻部圧迫感,くしゃみや時には鼻出血がおこる.咽頭,耳管の粘膜にも血管拡張がみられ,ことに喉頭粘膜や声帯に強い変化を生ずると,発声の変化—しゃがれ声や時には無声音—をきたすようになる.これらの変化は分娩後もとにもどる.
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