講座 分娩に関する諸診断法・5
胎兒進行程度の診断
近藤 千樹
1
1都立大久保病院
pp.10-13
発行日 1955年3月1日
Published Date 1955/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200803
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分娩の難易は,胎兒の進行程度とこれに要した時間的関係によつて定まるといえます.胎兒先進部の廻転の状熊と,骨盤内に於ける其位置が正常でありさえすれば,良いというわけにはいきません.例えば,胎兒先進部が兒頭であつて,其矢状縫合が第1斜経に一致し,小泉門が左前方に先進して,而も其が,骨盤潤部にあつたとすれば,成程其分娩は,正常の廻転を営んでいるとする事が出来ますが,此位置に来る迄に,破水後,余りの長時間を費しているとすれば,分娩としては,矢張異常である.これから先,何時間かかるか,わからぬと云う状態ならば,胎兒を仮死から救う爲に,鉗子手術も考えねばならぬと云う事になります.
こう云うわけで,分娩の難易は常に時間的因子を考えに入れないと判定が出来ない.少し極端に云うと胎兒の位置に異常があつても,或は廻転に狂いがあつても,スルスルと産れてしまつたら少しも難産とは云えません.即ち,分娩の進行程度と云う言葉は,現在,如何に分娩が進行しつつあるか,と云う意味に解して良いと思います.
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