補習講座
正常妊娠(4)—胎兒の發育
山元 清一
1
1名古屋大學
pp.11-16
発行日 1953年9月1日
Published Date 1953/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200428
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受精卵の発育
卵管膨大部で受精した卵は,卵管内を子宮腔の方に途られ,子宮腔の上方部粘膜に着床する.
卵子——精子に対する名称で受精前のもの又は受精されない状態にあるものをいう——受精によつて1個の受精卵すなわち精卵細胞になりただちに発育を開始し,等数的細胞分裂によつて,細胞数を増し,子宮腔到達時においては桑の実形を呈する細胞集団—これを桑実胚という—を形成し,卵の大きさは,その直徑約0.2〜0.3mmである.ここにひとつの疑問が起ると思うが,それは受精卵の大きさと卵管腔の広さとの関係であつて,卵管中もつともひろい膨大部で受精した卵は細胞の分裂により増大しつつ,より細い卵管腔の通過がいかにして行われるかの問題である.これは実験的に証明し得ないが,ひとつには卵の細胞数が増加しても,子宮腔に達するまでの間は卵自身の大きさにほとんど変化がないこと,2つには峡部,特に間質部通過に際して,卵がこれに適合すべく適当に変形するなどのことによつて異常なく卵管を通過して子宮粘膜に着床するもののようである.しかして卵が過熱になり著しく増大したるごとき際は卵管内に着床し卵管姙娠となる.桑実胚がさらに発育して榮養胚葉(トロホブラスト)及び胎芽胚葉(胎芽球)と称する2種の細胞群が形成され,卵は胞胚と名づけられる時期にまで成長し,こゝで卵の子宮粘膜着床が開始される.
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