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1.はじめに
地域で「理学療法士」に何ができるか.新人がいきなり地域に出るよりも,病院で経験を積んでからのほうが良いという声を聞くことがある.経験の未熟さから障害の捕らえ方を誤ったり,方針の立て方に自信がもてず他職種の中で理学療法士としてのAssessmentが実施できない,あるいは自分が何をしたら良いかわからなくなってしまう,等々考えられる理由は幾つか挙げられる.
しかし,私は地域とふれればふれるほど理学療法士の専門性を再認識させられるという経験をしてきた.そしてこれらの中には地域に入らなければ知りえないことが幾つもある.それらは,専門バカに陥るというのではなく,私たちが対象とする個々人の生活に活かすという意味で実感している.
今回,この紙面に執筆を許されたのを機会に,私どもの障害者福祉センターで9年間実施してきた「車いす定期点検・講習会」を御紹介したい.
この講習会を企画するきっかけとなったのは,訪問指導で見る車いす,散歩や市内イベントに参加する障害者その家族,そしてそこで使われている車いすを見て,車いすは障害者にとって,移動に欠かせないものであるにしては,その扱いや知識が不十分であることを実感したからである.
例えば私どもの講習受講者中(1994年度23名),どこかでその操作について適切な指導を受けた者は4名程度,メンテナンスにいたっては,ほとんどが指導を受けていない.そしてその実情は講習会当初からあまり変化が無いのである.
ここに紹介する講習プログラムも,試行錯誤の過程にあり,諸氏の御指導を仰ぐ段階ではあるが,このような講習の必要性を理解し,いっそう充実した形で実施してくださる病院や,施設が増すことを期待したい.
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