FOCUS
糞便中のDNA検査
古賀 宣勝
1
1国立研究開発法人国立がん研究センター先端医療開発センター新薬開発分野
pp.290-292
発行日 2016年4月1日
Published Date 2016/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206395
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はじめに
2000年に約9万2,000人が罹患し,約3万6,000人が死亡したわが国における大腸癌は,この15年でさらに増加し,罹患者数約13万6,000人で死亡者数約5万1,000人と,罹患者数は全悪性腫瘍のなかで最も多く,死亡者数は肺癌に次ぐ第2位になると予測されている1).一方で,癌が他臓器やリンパ節に転移しておらず,大腸壁に限局した早期癌の状態で診断され,外科的・内視鏡的な切除が行われれば,5年生存率は95%を超え,治癒率の高い癌でもある.そのため癌検診が特に重要な癌の1つであり,便潜血検査による大腸癌検診が世界中で行われている.その根拠として,3つの大規模無作為化比較対照試験が挙げられる.そのうちの1つであるミネソタ研究は,30年間の追跡結果を最近報告した2).全死亡率は変わらなかったものの,毎年の検診で32%,2年ごとの検診で22%の大腸癌死亡率低下がみられたとしている.
上記の研究で使用された便潜血検査化学法は肉や鉄剤の影響を受けるため,食事制限が一般的に必要であり,感度や特異度も低い.一方で,抗ヒトヘモグロビン抗体を用いる便潜血検査免疫法は食事制限が不要であり,化学法よりも感度と特異度に優れているため,わが国における大腸癌検診は便潜血検査免疫法の2日法が推奨されている.しかしながら,全被験者を対象に大腸内視鏡検査と便潜血検査を行った研究によると,大腸癌を発見する感度は20〜60%程度であると報告されている3),便潜血検査は便中の微量な血液を検出するものであり,大腸癌に特異的なものではないため,大腸癌に特異的な分子レベルの研究が盛んに行われている.
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