基礎実習講座
固定液と特殊染色
河又 國士
1
1中央鉄道病院中央検査部
pp.379-383
発行日 1985年4月1日
Published Date 1985/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203326
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"釣り"をする人たちの間に,釣りは「"ヘラブナ"に始まり,"ヘラブナ"に終わる」という言葉がある.病理標本についても同様で,良い標本作製は「"固定"に始まり,"固定"に尽きる」といっても過言ではあるまい.このように病理組織標本や細胞診の標本作製には,固定が重要な役割を果たしている.したがって固定が不完全であったり,固定液の選択を誤ったりした場合には,包埋,薄切,染色などにいかに努力しても,完全な固定を施した標本ほどの期待はできない.一方,特殊染色(以下,特染と略)とは生体を構成する,一成分または病的に出現した物質などを,他の組織成分と異なった色調に染色することである.歴史的には特殊物質の発見が特定の固定と染色によってなされたこともあり,特殊物質に適する固定液と染色法が存在する.
しかし,日常検査では10〜20%ホルマリンを賞用し,その組織を用いある程度の特染を行うため,ホルマリンが万能固定液のように錯覚する人もいる.これはあくまでも日常検査で診断するのに,必要かつ十分な最低の特染のことである点に注意すべきである.そのため染色法を改良し,元来の特染の染色結果に類似した方法が考案された.
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