けんさアラカルト
パラフィンブロックトリミングカッター
前田 明
1
1東邦大学医学部病理学教室
pp.938
発行日 1984年10月1日
Published Date 1984/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203174
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自動化の導入しがたい臨床検査分野の中で,病理検査などはその筆頭に挙げられるのではなかろうか.1665年,Hookがペンナイフでコルクを薄切し,顕微鏡下で細胞を発見し,Leuwenhoekが痩せた牛と太った牛の間に何らかの違いを見つけるために,1674年,カミソリで牛の筋肉を薄く切り,さらに画家に描かしめるため,サフロンを熱したワインで抽出し,染色したという顕微鏡的組織形態学の草創期から今日まで,時代の変遷は病理検査分野にもいくつかのエポックを生み出してきた.例えば,カッティングマシーンと呼ばれたミクロトームの登場や,ロータリーなどの検査機器などはその最たるものであるが,しかし,いまだ手作業と経験からもたらされる熟練度が大きく物を言う分野であることは否めない.
それにしても最近,私たちの周囲にはたいへん便利な機器がいくつも登場してきている.薄切用の替刃メスは,いまや全国津々浦々の検査室で使用されない所はないという現状であり,組織包理の例をとっても脱水からパラフィン浸透までの従来のロータリーに比べ,検体増に対処するよう大量処理が可能で,コンピューター化して効率的に行う自動装置や,包埋センターなど便利な機器がある.しかし,これらの検査機器は,概して高額で,いずこの検査室でも容易に導入しうるとはいい難い.空しいことながら,差し当たって我々に可能なことは,身の周りを見渡し,金のかからない工夫と創意をめぐらし,利用可能なものを見つけ出すぐらいのことである.
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