オピニオン
日本臨床細胞学会が目指すもの
佐々木 寛
1,2
1特定非営利活動法人日本臨床細胞学会
2東京慈恵会医科大学附属柏病院産婦人科
pp.388
発行日 2012年5月1日
Published Date 2012/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103522
- 有料閲覧
- 文献概要
日本臨床細胞学会は設立以来50年を超え,新たな50年に向かって着実な歩みを進めている.本学会は50年間かけて,わが国における臨床細胞学の発展,細胞診専門医,細胞検査士の養成と精度管理を行い,「がん検診」事業に多くの足跡を残してきた.その結果の一つとしてわが国における子宮頸癌の死亡率を低下させたことは,周知の事実である.
近年,臨床統計学の進歩により,検診事業のエビデンスの見直しがなされ,現在のところ細胞診を用いた検診で,死亡率を低下することができる検診は子宮頸癌のみである.残念ながら,肺癌,子宮内膜癌,消化器癌,泌尿器科癌では死亡率を下げるエビデンスは報告されていない.また,子宮頸癌検診においてもヒトパピローマウイルス(human papilloma virus,HPV)の検査法の開発やHPVワクチンの普及に伴い,将来子宮頸癌の発症が減り,細胞診診断法の需要の低下が考えられる.現在,東日本大震災,東京電力福島原子力発電所におけるチェルノブイリ級の放射性物質飛散と,わが国全体が危機的状況にある.このわが国の難局の時期において本学会としても不測の新たな課題が起こることも考えられ,その課題に適正かつ迅速な判断と対応が求められている.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.