役に立つ免疫組織化学●免疫組織化学で注目すべき抗体
悪性中皮腫に有用な抗体
酒井 康裕
1
,
大林 千穂
1
1兵庫県立がんセンター病理診断科
pp.628-631
発行日 2010年8月1日
Published Date 2010/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102855
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はじめに
悪性中皮腫は胸膜,腹膜,心膜,精巣鞘膜といった中皮細胞に覆われた“腔”に発生する,難治性で予後不良の悪性腫瘍である.発生頻度として,胸膜が7割前後を占め,心膜,精巣漿膜は稀である.一般にびまん性増殖の形態を示すが,限局性も存在する.病理組織学的には上皮型,二相型,肉腫型,線維形成型,特殊型と多彩な組織像を呈する.
特に胸膜悪性中皮腫発生の高危険因子として石綿(アスベスト)への曝露が指摘されているが,石綿に関連した労働者や工場の近隣住民などには労災保険法,石綿による健康被害の救済に関する法律で,補償対象となることから,医療上だけでなく社会的にもその的確な診断は重要である.
本稿では悪性中皮腫の診断に当たり,パラフィン切片を利用した免疫組織化学で有用な抗体に的を絞り紹介する.
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