研究
酸化タンタル心電図用電極
新明 豊次郎
1
1大阪逓信病院第3臨床検査科
pp.738-740
発行日 1976年7月15日
Published Date 1976/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917732
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はじめに
この種の電極の試みは1969年A.LopezとP.C.Richardsonがアルミニウムの表面を陽極酸化し絶縁物電極を製作した.ところが酸化被膜に多くの孔があり,そこから皮膚よりの湿気を吸収し,塩素イオンが酸化被膜を侵し抵抗値を下げる欠点がある.1971年にはC.H.Lagowらはアルミニウムより化学的,電気的に特性の良いタンタル箔を陽極酸化し,塩素イオンによる腐蝕を改善している.松尾らも誘電率が極めて高く,機械的に丈夫で安価なチタン酸バリウム磁器を使い絶縁物電極を製作した.
今回,著者はタンタル板を入手し,表面を陽極酸化し心電図用電極を試作した.従来の生体用電極のほとんどが金属電極であり,生体よりの電気信号を金属電極と電解質溶液(生体)との界面を通して電荷の授受が行われる電気化学的導電機構を用いて検出している.これに対して,絶縁物電極は金属と電解液との間に絶縁体を挿入して,その静電容量を通して,生体の電気信号のうち交流成分のみを検出する.実際に,酸化タンタル電極を使い電気的特性を測定し,また心電図誘導を行った結果,装着直後から雑音が少なく,分極電位などの直流電位が現れないので基線が安定しており,周波数特性についても申し分なく心電図用電極として十分に使えることが確認できた,特にこの電極では電極ベーストを必要としないため,長時間連続的に使用するICU,体育医学,宇宙医学に適していると考える.
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