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医療における臨床検査の重要性は改めて言うまでもない.疾患の診断にも治療効果判定を含む経過観察にも不可欠である臨床検査は,まさに医療の根幹を成すといっても過言ではない.一方で,臨床検査部門が院内で独立して検査を担当するようになり,機器の進歩や検査手順の確立,精度管理の充実により臨床検査が順調に運用されるようになると,臨床サイドにとっては診療端末や依頼用紙で検査をオーダーすれば苦もなく結果が戻されてくるのが当たり前になっている.検査部門が縁の下の力持ちに徹し,精度の高い検査がユーザーにとっては水や空気のように当然のものとして提供されることは,ある意味で望ましい状態である.しかし,検査部門側も臨床側もそれで満足してしまっていないだろうか? 臨床側からは検査に携わるスタッフの顔がみえず,逆に検査室からは患者さんや臨床医の様子や要望がわかりにくい状態になっていないだろうか? 臨床医が検査の実態や内容を十分理解できないまま,オーダーと結果の表面的なやり取りに終始し,検査を十分生かせなかったり思わぬピットフォールにはまったりすることを避けなければならない.医療関係者に「検査は結果さえ出れば誰がどのようにやっても同じ,安くできればそれで良い」と思わせてはいけない.検査部門と診療部門とがコミュニケーションを密にし,専門的知識をもった臨床検査技師や検査医が臨床現場に密着して検査に手をかければ,より臨床に役立つ検査を提供することができ,検査結果に付加価値を加えることができる.病院に働く職種のうち医師や看護師は患者さんにとって最も身近だが,臨床検査技師は薬剤師や放射線技師ほどには知られていない.臨床検査技師より清掃スタッフの方が認知度が高いという調査結果をみて非常に残念に思った.臨床検査医も医師の間ですら十分知られているとは言えない.検査部門のスタッフは黒子の役割に甘んじることなく自らの仕事や力量を周囲にアピールし,患者さんのためによりよい検査を提供するとともに,検査を十分に活用してもらえるよう努力したいものである.
検査部門が医療により大きな貢献をするために,臨床検査を通じた診療支援の充実,検査技師のチーム医療への参画などに力を入れる施設が増えている.診療支援の具体的な内容としては,臨床検査についての情報提供,患者さんの病態やユーザーのニーズに即した検査上の配慮・工夫,検査結果を臨床により役立つ形で提供する,検査結果に臨床的に有用なコメントを付ける,検査法や検査結果の解釈さらには検査計画等について専門的立場から質問に答えたり相談にのったりすること,などが挙げられる.どのようなことが臨床に役立つのか,各施設が手探りで工夫していると思われるが,他施設の実情を知る機会は少ない.そこで今回の主題として「臨床検査コンサルテーション/診療支援」を取り上げた.各検査分野でどのような診療支援が可能か,コンサルテーションや検査相談をどのように行うか,他施設の経験を参考に自施設での実践の手がかりにしていただければ幸いである.
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