シリーズ最新医学講座 臓器移植・6
臓器移植(総論):合併症―移植の感染
熊谷 直樹
1
,
斉藤 和英
1
,
高橋 公太
1
Naoki KUMAGAI
1
,
Kazuhide SAITO
1
,
Kouta TAKAHASHI
1
1新潟大学大学院医歯学総合研究科腎泌尿器病態学分野
キーワード:
免疫抑制療法
,
拒絶反応
,
CMV感染症の診断
Keyword:
免疫抑制療法
,
拒絶反応
,
CMV感染症の診断
pp.641-647
発行日 2007年6月15日
Published Date 2007/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101226
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はじめに
臓器移植は,末期臓器不全患者の廃絶した機能を提供者(ドナー)から移植した臓器により置換し,代行させる治療法である.例えば腎移植では,1954年に一卵性双生児間の移植をMurrayらが初めて成功させて以来,今日では末期腎不全に対する最良の治療法として確立されており,わが国では現在,心臓,肺,肝臓,膵臓(膵島),小腸移植が施行されている.移植療法には必ず臓器を提供するドナーが必要であり,提供者が生存中の家族である場合(生体腎移植)と死の直後である場合(脳死・心臓死移植)がある.わが国では臓器移植適応患者数に対する移植総数が極めて少なく,なかでも死体移植が極端に少ないのが現状である.わが国でも1995年より日本腎臓移植ネットワークが発足し,1997年には脳死ドナーからの多臓器提供を定めた臓器移植法の施行に伴い,日本臓器移植ネットワークとして改組された.しかし,献腎移植数は年間120~150例前後で,脳死移植も約50例/10年と低迷しており1),今後これらを増加させること,また臓器移植の恩恵を享受した移植患者(レシピエント)の長期成績を向上させることが最大の課題である.新規免疫抑制療法の導入2)により拒絶反応の抑制は容易になり,移植成績も向上したが,免疫抑制療法に伴う生体防御機能低下に起因して生じる,感染症対策の進歩も移植成績を安定させる大きな要因である.移植後に合併する感染症には病原体,また発生時期などにいくつかの特徴が認められており,そこでそれを熟知し,早期に対応することは患者管理において重要である.
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