麻酔医が往く・4
人工呼吸器と麻酔医
後明 郁男
1
1箕面市立病院麻酔科
pp.367
発行日 1993年4月1日
Published Date 1993/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903819
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人工呼吸器の普及で贅沢な悩みが
全身麻酔をかけると,人は多かれ少なかれ呼吸機能が低下するので,全身麻酔中は呼吸を補助する必要がある.自発呼吸を温存して,マスクによる酸素供給程度で済ませられることもあるが,近年の全身麻酔では筋弛緩薬を併用するのが普通で,この場合,呼吸は完全に停止するから,フルに呼吸を補助しなければならない.つまり人工呼吸をする.人工呼吸が,日常臨床全般にわたって組み込まれているのは麻酔科だけだから,年季の入った麻酔医は人工呼吸管理の専門家でもある.
15年程前までは,数百床規模の大病院でも人工呼吸器は数える程しかなく,したがって奪いあいの状態で,どの呼吸不全患者に装着して,どの患者には装着しないかが,しばしば倫理的問題や経済的問題もからんで深刻でした.私は,その時代を知っている最後の世代に属する.近年,わが国は豊かになり,人工呼吸器が広く普及し,私どものような中規模(300床)病院でも病棟用人工呼吸器が20台余りもあって,少なくとも上記のような悩みから解放されたことは同慶の至りである.
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