主張
勤務医選別の時代
S
pp.1013
発行日 1991年12月1日
Published Date 1991/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903718
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医師過剰時代突入といわれている.確かに我が国の就業医師数は20万人を越え,人口10万対医師数も欧米諸国の水準に達しつつある.しかし医療の現場では,まだまだ医師不足の分野が多い.地方都市,民間病院では未だに勤務医不足が目立ち,過疎地の医師不足も解消されていない.一方,大都市における開業医の減少傾向も見受けられる.その高齢化も顕著である.このような医師の偏在は,年代毎の医師供給のアンバランスによりさらに助長されてきている.第2次世界大戦後の数年間に医学部を卒業し,開業してプライマリケアを支えてきたいわゆる開業医の団塊の世代がそこにあるからである.その後,医療供給体制は病院を中心にシフトし,医師の勤務医志向が強まった.昭和40年代の医大増設と共に養成された医師の多くが勤務医の道を歩み,大きな勤務医師の山を形成している.
地域保健医療計画の1つの目的であった必要病床数の策定は全国各医療圏でほぼ終わり,今後の病院病床数の大幅な伸びは不可能な状態となった.即ち新しい勤務医師の需要は今後大きくは期待できない.当面,偏在する不足を解消する方向で新しく養成された医師は吸収されるはずである.いま仮に,全ての勤務医が一生このまま勤務医を続けるとすると,病院医師の高齢化問題は避けられまい.
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