Principle 病院経営・6
ハイリスク・ローリターン経営
谷田 一久
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1広島国際大学医療福祉学部医療経営学科
pp.570-571
発行日 1999年6月1日
Published Date 1999/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541902734
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経営戦略とは,過去と現在を踏まえつつ,未来における病院の姿を具体的にイメージすることである.したがって,経営戦略策定とは,過去と現在だけを扱う経営分析でもなければ,希望や理想だけを並べたてるものでもない.その病院が所在する地域で築き上げてきた住民との信頼関係,施設や人材といった内部資源,それらが複雑に作用しあって醸し出される組織風土や組織文化,そして,地域人口や産業の移り変わりや医療制度の将来像などの外部環境に関する事柄,それら諸々の要因を勘案して将来のビジョンを策定するのが経営戦略というものである.
しかしながら,上記に掲げたような要因を一つ一つ吟味し,さらにそれらを統合して将来のビジョンを形作ることは極めて困難な作業といっても過言ではない.おそらく,院内にこの作業を遂行できるだけの能力を持つ人材のいる医療機関はわずかしかないであろう.いきおい,将来の病院の盛衰は院長の直感や志向によるところとなる.バブル以前であれば,病院に対する規制や枠組みが比較的緩やかであったため,病院の経営リスク(経営に失敗する確率)は小さかった.
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