医療技術革新の展望とこれからの医療政策—ヒト遺伝子研究の意味するもの
ヒトゲノム・プロジェクトとアメリカの医学研究政策
広井 良典
1
1厚生省社会・援護局更生課
pp.298-301
発行日 1995年3月1日
Published Date 1995/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901472
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ヒトゲノム・プロジェクトの背景
その“アメリカ的”文脈(承前)
②第2期(1966〜1982年)増加の鈍化の時代;医学研究への疑義と「がん十字軍」をめぐる攻防
前回述べたように,第2次大戦後の時期にアメリカの医学研究予算は飛躍的な増加を示したが,60年代に入った頃から,予算当局や議会のなかにはそうした大幅な研究予算を今後とも増大させ続けていくこと,とりわけそうした研究支出への見返り,すなわち医学研究の具体的な成果に対し疑念を抱く者が現れるようになった.加えて,前回も触れたように地滑り的勝利で大統領になった民主党のジョンソンは,これまで医学研究分野に連邦政府は大幅な投資を行ってきたが,そろそろその成果が具体的に国民に還元されるべき時期であり,そうでないのであれば,政府より直接的な形で国民の医療へのアクセスを高めるような政策を進めていくべきだ,との態度を示すようになる.そのひとつの現れが1965年に法制化された地域医療プログラムであり,そのひとつの眼目は,医学研究の成果を中心的な研究機関から地域の医療施設へと迅速に拡散・普及させることにあった.
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