特集 医療費の配分
調査報告
西ドイツの病院財政安定法
紀伊国 献三
1
1病院管理研究所
pp.42-44
発行日 1975年1月1日
Published Date 1975/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205519
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病院の老朽化と赤字からの再建政策
1972年6月29日,西ドイツ連邦政府は略称KHGとよばれる病院の財政安定と病院の医療料金の規制に関する法律を制定した.その背景となる考え方は,当法律案の提出理由説明書にもあるごとく,病院の赤字が急激に増大したことによるものである.西ドイツの病院は,3,600病院,約70万ベッドをもっているが,連邦政府病院施設現況報告書によると,1966年度において年間の経営の赤字は8億4千万マルク,1970年にはそれが8億9千万マルクといわれ,1973年では実に20億マルクにも及ぶといわれている.これは邦貨に換算して2千億円を超える赤字であり,いかに巨額であるかということがわかる.また同報告書によるならば,多くの病院が老朽化の危機にさらされており,全病院の約3分の1以上が建設後50年以上を経過した老朽病院であり,近代病院としての機能を果たしていないということも指摘されている.
そのような事情を背景に,西ドイツ政府ではすでに,1969年5月第22憲法修正法によって,連邦政府が病院財政の安定のために権限を行使しうることを州政府に認めさせており,そのことを背景として1972年6月29日発行したこの法律によって,連邦政府が病院の維持運営の公的責任をもつことを明らかにした.ある意味では画期的な法律である.
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