病院建設の基本問題・4
病院側からみた需要調整および施設再編成計画—1.患者調査からのアプローチ
栗原 嘉一郎
1
1大阪市立大学・建築計画
pp.57-67
発行日 1968年7月1日
Published Date 1968/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203388
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はじめに
現在のわが国の病院のあり方について多くの問題点があることは,すでに各方面で指摘されてきた。中でも大きな問題と思われるものは,第1には,病院という病院が家庭医としての開業医に関係なく,風邪ひき・腹痛に至る大量の外来患者群の処理に忙殺されていることであり,第2には,入院施設としての病院もどれもが急性疾患から慢性疾患までを一様に含んで特色がなく,患者の入院期間も回復期ケアーまでを含んで,いたずらに長いものになっていることであろう。それがベッドの回転率を低め,病院機能の向上を妨げる大きな要因となっているからである。
病院の機能を高めるために,高度なスタッフや設備を整備する努力はこれまで常に払われ続けてきた。だが,結果としてそれらが風邪ひき・腹痛のたぐいの患者や慢性の患者の低診療にエネルギーの大半をさかれ,スタッフがせっかくの高度の技倆をふるう折も少なく,高度な設備の利用率も高くないというのでは,社会的にまことにもったいないやり方だといわねばなるまい。すなわち,病院の機能を高めていくためには,現在のままの整備では限界があるのであり,病院の患者自体が真に病院のスタッフや設備にふさわしい者におのずからしぼられてくるような方策が,医療施設体系全体の問題として考えられなければならないのである。
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