病院の広場
自治体病院長として思うこと
菊地 博通
1
1広島県立広島病院
pp.21
発行日 1967年3月1日
Published Date 1967/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203043
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日本の医療制度,保険制度は,ますます混乱の様相を呈して来ている現在,公的病院のあり方も当然考えるべき時期に来ていると思う。公的といっても国立,県立,日赤,済生会,掖済会,農協,国保直営等,その経営主体や性格の違うものが雑然と設置され,各々が無駄な競争をしているのではないだろうか。たとえば1都市で1〜2か所ですむようなCo60を病院の面子とばかりに何か所でも備えつけ,十分利用しないまま人,物,金の浪費に終わってはいはいだろうか。このような例はまだまだ多い。したがって,公的病院を統廃合して適正な配置,規模,性格づけ,施設などについての統制は当然必要になると思う。またこのような統制は真に国家の発展と国民の健康を思う公平な考えの各界代表の人びとによる委員会で行なうべきと思う。しかもこれらの病院は真にやむを得ない場合の他は原則として入院以外はとらず開業医との競合をさけること,また運営費は国あるいは地方自治体の負担,または寄付によるべきものである。先年アメリカのNIHを視察した時の話によるとロックフェラー等の寄付が多いのはすべてが慈善のためのみではなく,税金の関係で病院などに寄付したほうが手取りが多くなるという税制度のためであるという。黒い霧の原因となっている政治献金には税がかからず,病院などへの寄付は税の対象となるような税制度は改める必要があるのではないか等々,理想像を夢みることがある。
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