--------------------
あとがき
吉田 幸雄
pp.940
発行日 1960年12月1日
Published Date 1960/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201747
- 有料閲覧
- 文献概要
このあとがきを書いている唯今は,未曾有の病院ストの真最中で,しかも見通し不明というところです。私としては,起るべきものが起つたと見ています。その理由には沢山のものが挙げられていますが,(1)病院経営者層の不明瞭と経営者意識の低調,(2)病院内部組識の特徴である機能組織による各種職能群間および対患者間に生ずる人間関係の複雑性,(3)医療資本の取り扱いに対する政府の無方針,(4)社会保険医療費の現状無視等が基本的問題と思います。これらの問題については,永年本誌上でいろいろと論議されて来た問題で,少なくとも本誌の愛読者には十分認識されていた問題で,世論が「病院経営の前近代性」「前近代的労働管理」と簡単に経営者を批判していることは,ごく皮表を見ているにすぎないと思います。「どうも一般の企業とは性格が非常に違うものらしい」という程度の認識が新聞論調にもでて来たようですがこの程度の認識が示すように,病院が社会に不当な扱いを受けているのです。
病院経営は,(1)病院資本(自己資本)(2)病院組織(生活共同体)(3)利用者集団(社会)の三者の利益の調和を求めるところにあるべきです。しかし借入資金の上にあぐらをかいた開設者は無力なものですから,結局は病院組織団体と地域社会との利益の調和を求めざるをえません。従つて病院団体が強く発言を要するならば,世にいう「アベック」闘争にならざるをえないことも致し方のないことでしよう。
Copyright © 1960, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.