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甲表乙表による損益計算
青木 賢三
1
1東京医科歯科大学医学部附属病院
pp.415-421
発行日 1960年6月1日
Published Date 1960/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201669
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まえがき
社会保険の診療点数は曲折を経て昨年6月甲乙の二本立と決まり同年10月から実施された。しかしこれは本来一本であるべきものであるが当時の厚生省と医師会の対立関係から政治的妥協の産物として二分化されたものでいずれ適当な時期をみて一本化する段取りとなつていた。厚生省では甲乙一本化を早急に解決しい意向であり,昨年暮の国会にこの件を持ち出し11月18日の衆議院社会労働委員会に於いて一本化促進を与野党共同提案で決議,さらに12月3日自民党に医療対策特別委員会を設置してそれが促進に乗り出すことになつた。これを契機として厚生省では10月頃に「医業経済実態調査」をする考えで準備をすすめているが,これに対し調査を受ける側の日本医師会ではこのほどの理事会で「厚生省の調査には応じられない」との強硬態度を明らかにする声明を発表したため診療費問題の混乱が再び表面化しそうな情勢となつた。
現行の甲表は厚生省の主張する新しい方式を取り入れた診療点数表であり,医師の技術面を重く見て診察,検査,大手術などの料金を大幅に値上げすると同時に,投薬や注射の料金を低く押えた。これに対して乙表は従来の投薬や注射の料金を重くみる方法で点数のベースアップを行つたのである。
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