特集 デフレ下における病院
巻頭言
井手 義雄
pp.93
発行日 2003年2月1日
Published Date 2003/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102011
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
バブル経済崩壊後の不良債権処理の遅れは,わが国経済の低迷を来しデフレ経済状況に突入した.また,経済の低迷に伴う税収不足,さらには急激な少子高齢社会への移行は,わが国社会保障制度の抜本的な改革を余儀なくしている.
戦後のわが国の社会保障制度は,右肩上がりの経済成長の下に運営されてきた.また,社会保障における保健・医療・福祉分野の中心である病院もこれらの経済成長下での運営を行ってきた.現在のデフレ経済下における病院運営は,まさに戦後のわが国の病院が初めて経験する社会環境であり,緻密な対応が必要である.デフレ現象は,大都市における企業の「勝ち組」,「負け組」の区別を明確にしてきた.また,企業の生き残りのための合併・分社化,またそれに伴う種々の経営対策の断行は,病院の今後の経営に脅威すら感じられる.デフレ下における社会環境の変化,また改革のスピードがアップされた医療制度改革の進行は,病院における二重の対応を要求してきている.医療制度改革に伴う地域医療機関としての役割,またデフレ下における地域住民の厳しい医療サービスへの要求への対応いかんで,企業と同様に医療機関も「勝ち組」,「負け組」に二分化されると思われる.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.