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定義と歴史的展開
Crew Resource Management(直訳すれば「乗務員資源管理」,以下CRM)とは,航空分野において,安全で効率的な運航を達成するため,限られた利用可能なすべての資源(人員・手順・装備など)を効率的に活用する,統合的マネジメント手法である(図).
1973年,航空機墜落事故で人間の過誤が果たす役割について,NASA(National Aeronautics and Space Administration:米国航空宇宙局)は,ヒューマンファクター*) にかかわる調査研究結果を公表し,乗務員間のリーダーシップ・人間関係・コミュニケーションにかかわる訓練が,事故に関与するヒューマンエラーの防止に有効であることを示した.そこで,人間関係や操縦室の管理をより効果的に行うため,従来の訓練プログラムの再評価が行われ,知識(knowledge)・態度(attitude) ・技術(skill)の各側面から検討が加えられ,1978年には,LOFT(Line-Oriented Flight Training,後述)プログラムが開発され,1979年にはCockpit(コックピット,操縦室)Resource Management ワークショップが開催された.CRM訓練は,乗務員を技術的に熟達した個人の集合としてではなく,一つの完全なチームとして機能することに焦点を合わせているので,当初は,「専制君主的」な性格を持つパイロットの再教育に有効性を発揮した.その後,CRMの技術は,操縦室内にとどまらず乗務員全体に求められることになり,その内容には,職務配分と責任分担,優先順位付け,モニタリングと照合,情報の使用,問題評価と先入観の回避,コミュニケーション,リーダーシップなどの項目が挙げられた.
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