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腹腔内外へ裂傷を来たした外傷性膀胱皮下破裂兼骨盤骨折の1例
神原 愼雄
1
1熊本大学医学部皮膚科泌尿器科教室
pp.662-664
発行日 1954年11月1日
Published Date 1954/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201303
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緒言
外傷性膀胱損傷は続発する尿浸潤と感染とにより予後多くは重篤であり,更に骨盤骨折或は腹腔内損傷を合併する際は,一層危険にして死亡率は極めて高くなる。Michelsは単純な膀胱外傷には死亡例はなかつたが,腸損傷を合併せる際には22〜43%の多きを数え,Stevens and Delzellは膀胱外傷27例に於て,腹膜外破裂13例中2例(15。3%)が,腹腔内破裂14例中8例(57.1%)が死亡したと云う。又D.E.Newlandは骨盤骨折患者357例に於て尿路合併症なき場合は死亡率8.3%に過ぎなかつたが尿路損傷を合併し来ると19.3%にみられたと云う。膀胱破裂の際骨盤骨折を伴う場合は屡々にしてPeacockは膀胱破裂28例中85%に骨盤骨折を,Campbellは骨盤骨折160例中25例に膀胱損傷を認め,Toolは両者の合併の頻度は極めて高いことを主張している,又膀胱破裂の際は腹膜に覆われた膀胱頂部及び後壁に多いために腹腔内破裂が症例の1/3を,腹腔外がその2/3を占めると云う。腹腔内破裂の主併発症は全腹腔内への尿の侵入にして,腹腔外のそれは膀胱,直腸周囲,皮下組織への尿浸潤である。
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