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諾威疥癬
笹川 正二
1
,
佐藤 直子
1
1東京大學醫學部皮膚科教室
pp.369-372
発行日 1952年8月1日
Published Date 1952/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200770
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疥癬が終戰直後著しく蔓延したことは橫山,大森等の統計がこれを示しているが,わが東大皮膚科の外來患者に就て觀ても昭和18年の8,721名中387名,4.4%,19年の6,635名中503名,7.6%,に對し20年は4,116名中1,407名,34.2%,21年は5,750名中1,285名,22.3%なる高率を示した。それが翌22年は5,844名中452名,7.7%,翌々23年は6,734名中237名,3.5%と頓に減少し,この1,2年外來患者中に本症を見ることは甚だ稀となつた。扨て終戰直後かくも多數の患者が發生したにも拘らず,夫等は何れも小丘疹,水疱,膿疱を主徴とし,乃至之に膿痂疹,濕疹を併發した,普通の所謂乾性或は濕性疥癬ばかりで,諾威疥癬のかたちのものは絶えてこれを見なかつた。然るに最近我々は精神薄弱な,都會の1浮浪者に普通の疥癬の好發部位のみならず,耳殻,肘頭,臀部,足等にも著明な角質増殖を生じ,うちに疥癬蟲,その幼蟲及び蟲卵の多數を證明した。所謂諾威疥癬を經驗した。
今日の諾威疥癬のかたちのものはDanielsen(1844)及びDanielsen-Boeck(1848)が諾威に於て發見,記載したのがはじめで,HebraによりScabies norvegica Boeckiiと命名された。
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