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I.はじめに
医学分野におけるレーザーは,そのすぐれた熱効果が主に注目され,レーザーメスという形で広く応用されている.しかし,レーザーには,熱効果のほかに,圧力や弾性反跳,細胞増殖の促進,ラマン効果やブリロインの広がりの増加,原子の衝撃による局所熱発生,二重光子の吸収,それにブリーラジカルの形成などの作用もあり4),一部,癌細胞の診断や治療2)などに応用され始めている.しかし,これまで,レーザーの医学分野での応用は,あまりにもレーザーメスに期待が寄せられ,その目的からはずれた超低出力レーザーや,レーザー光が持つ特有の性質を利用した別のレーザーなど,新しい医学分野への応用が立ち遅れているのが現状である.
このレーザーの新しい応用の1つとして,1967年Strully10)はneodymiumを用いて,1980年Jain7)らはYAGレーザーを用いて,血管の吻合を試みている.しかし,YAGレーザーでは組織透過率がCO2レーザーより高く1),血管内膜損傷を起こしやすいため,その防止に必要な技術的煩雑さもあって,臨床に応用されるまでにいたっていない書これに対して,Freeman,Thomsonら3,11)は,レーザー出力9mWレーザービーム径125μmの超低出力CO2レーザーを用いて血管吻合術を可能にし,1982年,Conference on Lasers and Electro-Optics(CLEOと略す)の学会で報告した.時を同じくして著者らも,5mW-15Wまで安定した出力とビーム径90μmまで絞れる超低出力CO2レーザーを開発し,Freemanよりもっと安全に,容易に微小血管の吻合ができるようにし,1982年の日本脳神経外科学会,次いで日本レーザー医学会5)に発表した.今回はその内容と本法の基本的事項を中心に紹介したい.
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