書評
ことばもクスリ 患者と話せる医師になる--山内 常男●編
箕輪 良行
1
1聖マリアンナ医大
pp.451
発行日 2012年5月10日
Published Date 2012/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101729
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
●日本の現実に即した医療コミュニケーションの新しいテキスト
1990年代以降に医学教育を受けたOSCE世代と呼ばれる医師は「私は○○科のミノワです」と自己紹介でき,最後に「ほかに何か言い残したことはありませんか」とドアノブ質問ができる,という筆者らの観察は,評者もアンケート調査で実証してきた.また,評者らが開発したコミュニケーションスキル訓練コースを受講した,地域で高い評価を受けているベテラン医師が受講後にみせた行動変容は唯一,ドアノブ質問の使用増加であった.
本書は,若い医師たちをこのように見ていながらも,日ごろ,目にして耳にする患者からのクレームをもとにどうしても伝えたい「言葉」の話を医療従事者に向けてまとめた書物である.クレーム実例から出発しているのでリアルであり,真摯な語りかけである.この領域で二冊のテキスト(『医療現場のコミュニケーション』『コミュニケーションスキル・トレーニング』,ともに医学書院刊)を執筆している評者にとっても,このような語りかけがどうしてもかくあるべしの理想論になりがちで非常に難しいのがわかるだけに,クレームからのアプローチは執筆の抑制を保つうえでうまい戦略だと感心させられた.
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.