Japanese
English
特集 神経研究の方法論—その新らしいアプローチ
末梢神経生検
Peripheral Nerve Biopsy
塚越 廣
1
Hiroshi Tsukagoshi
1
1東京大学脳研究所神経内科
1Dept. of Neurology, Institute of Brain Research, Facuity of Medicine, Univ. of Tokyo
pp.535-551
発行日 1969年11月25日
Published Date 1969/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904625
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Ⅰ.緒言
最近各種生検が盛んに行なわれるようになつたが,同時に神経生検が新しくとりあげられてきた。従来,神経生検がその他の臨床医学の分野における生検のように容易に行なわれなかつた理由としては,その生検手技の困難さと同時に神経組織の非代償性とそれによる機能障害とにあるとされてきた1)。しかし末梢神経生検にあつては,再生能力を有しているため生検による何等かの障害が起りえても,少なくともこれが非代償性によるという理由はあげられないのであり,適当な神経をえらべば,生検手技は簡単で,しかも機能障害を最小になしうることも考えられる。
一方従来の神経病理学についていえば中枢神経系の検索に重点がおかれ,末梢神経組織の検索は必ずしも十分であつたとはいい難く,末梢神経に関する知見についてはなお不明な点が少なくない。ここに剖検時における状態を検討することのほかに生検による疾患の経過途上の末梢神経障害の所見が加えられることは,電子顕微鏡その他の研究部門の発展と軌を一にして神経疾患の病理学的所見に大きな寄与をするだけでなく,疾患の病態生理ないし,病因の解明の上にも重大な貢献をなすものであろう。さらにこのような神経生検手技はそのまま生理学的研究にもつらなり,病理組織学的所見と神経伝導速度などとの比較が容易に行なわれることにもなる。
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