#総合診療
#書評:まるごとアトピー—アトピー性皮膚炎の病態から最新薬剤、患者コミュニケーションまで
市原 真
1
1札幌厚生病院 病理診断科
pp.215
発行日 2023年2月15日
Published Date 2023/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204170
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『まるごとアトピー』を読んだ。読後感は「全クリ」に近い。単にボスを倒してエンディングを見た時の感動にとどまらず、サブエピ、やりこみ要素、追加DLCなどを含め、ゲームソフトの全コンテンツをコンプリートした時のそれだ。『ファイナルファンタジーX-2(FFX-2)』に喩えると、ティーダが生き返るトゥルーエンディングまで見た時の気持ち。われながらわかりやすい喩えだ。
本書は、きわめて医学書院らしい本である。網羅性がそうとう高い。アトピーという一大ジャンルの隅から隅まで触れられていることに感心する。ちなみにみなさまは、「アトピーの教科書」と聞いて、何が書いてあると予想されますか? ぱっと思いつくのは、「診断」「治療」「基礎医学」あたりですよね。本書には……皮膚の正常組織構造、アトピー研究の歴史、小児アトピーの位置づけに始まり、アトピーの鑑別診断、アトピー基礎医学から病態を解明し、標的分子をハイライトし、次々とアップデートされる最新薬剤の薬理と使用のコツを流れるように説明し、ナローバンドUVB、漢方(秀逸!)、ジェネリック(基材に関する注意点は仰天したし納得)までカヴァー。プロアクティブ療法、タイトコントロール、患者や家族に対する生活指導や医療行動経済学、SNSにおける医療情報の扱い方まで。ほんとうに高い分解能で総ざらい。心意気は豪胆、仕かけは繊細である。
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