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本書の著者であるジャンさんとの出会いは、1980年代後半までさかのぼる。当時、私が勤務していた東大病院分院の助教授から、ジャンさんを紹介された。知り合って10年間は、2週間に1回程度おしゃべりの機会をもち、論文ができたら校閲してもらっていた。その後、私の職場は高知大、そして高知医療再生機構へと変わったが、投稿論文はすべてジャンさんの手を経ており、今では機構が販売する学内委員会Web審査システムの英文マニュアルまで校正をお願いしている。
今回、本書を読み進めながら、30年以上前にレトロな東大分院の建物で教えてもらっていたことは、ステップⅠの「英語のマインドをつくる」に述べられている内容であったと気づいた。たしかに、科学論文を書こうとする日本人は皆、英作文はできる。しかし残念なことに、「(日本の)学校英文法」とは似て非なる、「英文」を構成する法則やコンセプトの理解は欠落している。native speaker(以下、native)が学ぶようなparagraph writingの概念を教える授業は、日本にはないからである。そこをすっ飛ばして中学から大学まで英語を学んだ若い研究者たちは、卒前あるいは卒後しばらくして初めての論文を完成させる。「事実は現在形で」とか、「受動態は少なめがよい」とかいう先輩の指示だけを道標に…。“paragraph”を日本語の「段落」に置き換えただけの頭では、「ミニエッセイ風」などの構成は思いも至らない。このような前提を知らないと、nativeのproofreadを受け取った時、その朱字を許容しがたい場合がある。nativeも、日本人の文の順序や改行を怪訝に思いながら、校正と格闘する羽目になる。
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