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【コラム Endocrinology in Generalist Medicine】
低血糖のハンドリングは?
泉山 肇
1,2
1東京医科歯科大学医学部附属病院 医療連携支援センター
2東京医科歯科大学医学部附属病院 糖尿病・内分泌・代謝内科
pp.1077
発行日 2017年8月15日
Published Date 2017/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429201060
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「低血糖症」とは、血糖値60〜70mg/dL未満に加え、交感神経刺激症状(発汗・不安・動悸・手指振戦など)あるいは中枢神経症状(頭痛・空腹感・目のかすみ・眠気・痙攣)が存在する状態、と定義される。原因としては、❶薬剤性、❷腫瘍(含:過形成)、❸反応性、❹インスリンに対する抗体、❺インスリン拮抗ホルモン低下、❻糖新生の抑制あるいは低下、❼詐病が挙げられる。原因が多岐にわたるため、十分な鑑別が必要となる。意識障害患者を診察する際、脳血管疾患や心疾患のみならず、低血糖症の存在を考えることが重要である。糖尿病薬、あるいは低血糖を起こす可能性のある薬剤(表1)の内服の有無、胃切除術施行の有無、インスリン自己抗体あるいはインスリン抗体の有無、糖質コルチコイド・成長ホルモン・グルカゴン・カテコラミンなどの低下の有無、肝機能低下あるいはアルコール多飲の有無を確認し、腫瘍性が強く疑われ膵外腫瘍の存在が否定された場合、「インスリノーマ」の可能性が強く、72時間絶食試験を検討する。これは低血糖が生じない場合3日間絶食となるきわめて侵襲の強い検査であり、十分に鑑別をしたうえで施行することが望ましい。インスリノーマは99%膵内に存在するため、選択的動脈カルシウム刺激試験(SACI test)を施行し、腫瘍の局在診断を行う。腫瘍が確認できないにもかかわらずSACI testが陽性となる場合、「成人型nesidioblastosis」の鑑別が必要となる。
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