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本号は,「CTHA/CTAPの歴史と今日的意義を考える」ということで企画した.CTAPの歴史は金沢大学松井 修 教授が1981年日本消化器病学会誌に掲載したのが世界初の報告である.それ以来,CTの普及とともにCTHA/CTAPの果たしてきた役割は極めて大きい.本法を用いることにより肝臓の動脈血流と門脈血流の分離評価が可能であり肝結節性病変のみならず肝臓全体の血流動態異常を詳細に評価することが可能となった.また,IVR-CT,もしくはangio-CTといわれる装置が日本国内で普及し,極めて簡便にCTHA/CTAPを得ることができるようになってきたことも日本ならではのことである.ただし,このangio-CT装置があまり日本以外では普及しなかったことは,日本と諸外国との肝腫瘍や肝血流動態への緻密なアプローチがいかに異なるかということを如実に語っている事実であり極めて興味深い.CTHA/CTAPの臨床的役割としては転移性肝癌の検出や肝細胞癌のステージングに加え,もう1つの大きな柱として肝細胞性の結節が門脈支配か動脈支配かを明らかにすることができ,それにより悪性度が異なるという松井教授一門の仕事から明らかになってきたわけである.すなわち,このようなことを通じて肝癌の多段階発癌と血流動態とが極めて相関することが明らかにされた.
ただし,一方では最近の流れとしては包括医療化ならびに64列のMDCTやSPIO-MRI,EOB-MRIなどの普及やSonazoidを用いた造影エコー法などの普及に伴い,その役割がやや変貌しつつある.Sonazoid造影エコー法は標的結節に関しては結節内の血流検出感度に関してはほぼCTHAと同等の動脈血流評価が可能となってきた.また,CTHA/CTAPの欠点としてあまりにも小さな病変を捉えることが可能になった反面,造影剤を圧入することによるshuntや偽病変の描出も増加し診断の上ではかえってマイナスとなる場合もありoverall accuracyでみた場合,CTHA/CTAPとMDCT+EOB-MRIとが実際の臨床においてどのくらいの違いがあるかについては議論の分かれるところである.そのようなことからCTHA/CTAPは最前線の実地臨床においてはもはや必須ではなくなる可能性も指摘されている.
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