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編集後記
下瀬川 徹
pp.608
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1428100106
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今回,特集「早期膵癌―Stage Ⅰへのアプローチ」を組んだ.膵癌の早期診断に関する特集は,「消化器画像」,「肝胆膵画像」を通じて2度目のことであり,前回は1999年の第1巻,第6号の特集「ts1浸潤性膵管癌の診断と治療成績」である.この9年間に膵癌早期診断は進歩したであろうか? 前回の特集では「ts1膵癌をめぐって」と題する座談会が組まれ,有山襄先生の司会のもとに,川原田嘉文,渡辺英伸,須田耕一,柳澤昭夫,中山吉福,山雄健次の各先生によって病理学的な発癌機序,早期診断の可能性,治療と予後について熱く語られている.有山先生はts1の中でも比較的良好な予後が期待できるのは10mm以下の小膵癌であると述べている.
過去9年間の膵癌診療の変化は大きい.以前,期待を寄せられていた膵液遺伝子診断の限界が明らかとなり,発癌の遺伝子病理学的概念としてPanINが導入された.診断面ではMD-CTが出現・普及し,PETやPET-CTも日常臨床で用いられるようになった.膵癌の新たなリスクファクターとしてIPMN,膵囊胞が指摘されている.エビデンスに基づいた診療が広く受け入れられるようになり,治療成績にも客観的評価が求められ,膵癌手術も拡大指向から標準術式へ変化している.
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