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1度ならず2度も心筋梗塞で搬送されたが,インターベンションで生還し無事退院,それでも繰り返せば心機能は少しずつ低下する.血糖コントロールはいつのまにかHbA1c 9%に逆戻り…….どうしてあなたは平気なの?????? いくら“?”を付けても足りないのだが,こんな患者さんと医師,考え方の隔たりは大きい.医師と患者の見解の相違,臨床現場においては日常茶飯事のことであるが,そのほとんどは双方のもつ医療情報の質と量の違いによるものと思う.患者さんの理解が進まないまま,何年も経過するとやがて合併症は深刻化,身体障害者となってしまう.体が不自由になってから気づいてもすでに遅いが,通院したまま障害者になる人は多くない.障害者はそのほとんどが治療を中断して悪化させる.
中断する患者さん,人生の難しい局面で中断やむなしと判断し,何かを決断して中断に入るわけではなさそうである.たまたま予約日に用事が入って行きそびれ,行かなくちゃと思っているうちに薬がなくなり,どうしよう,どうしよう…….1回行きそびれた後にそのまま中断に入る気持ちはどうだろう? たった1人の人間である自分(患者個人)の限られた人生経験でしかないのに,何とかなるはずという甘い読みの大決断.一応は合併症の情報を知ってはいても,まだ大丈夫だろうという甘い読み.事が起こる直前の急ハンドルで乗り切ってやるという甘い読み.異常を少しでも察知したら病院に駆け込む……,という心の準備だけはしているが,これは実際には役立たない.よい血糖コントロールを保ち合併症が起こらないように準備するのがまっとうな道なのに,コントロール不良者はともかく心の準備だけしている.そして,“結膜出血”で眼科に飛んでいく.はたまた糖尿病を患う家族に深刻な合併症という不幸が起こるが,なぜそうなったのかという真の原因は知らないまま.ずっと拒否し続けてきたインスリン治療を始めたら,その数カ月後に急に倒れたという,糖尿病をもつ知人に起きた出来事のうわさ話.テレビの健康食品のコマーシャルメッセージ(CM),健康娯楽番組,健康雑誌の危ない広告……迷わせる情報は数知れない.
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