書評
査読を制する者は論文を制する―医学論文査読のお作法―大前憲史 著/福原俊一 監修
小島 祥敬
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1福島県立医科大学 泌尿器科学講座
pp.70
発行日 2021年1月20日
Published Date 2021/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413207105
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論文の書き方や医療統計について指南する書籍は数あれど,査読について,このように体系立ててその方法論を分かりやすく解説された書籍を私は知らない.私自身,論文はもちろん,学会発表や研究助成に申請された研究など,これまで査読者として査読に携わることは多くあった.しかし,査読についてしっかり学んだかと問われれば,答えは残念ながら,「No」である.本書は,研究者としてまだキャリアの浅い,若い先生だけでなく,査読者としてすでにある程度経験を積まれた先生にあっても,これ1冊で研究者としてのレベルをぐっと引き上げてくれる,大変な良書である.
◆本書の特徴
福原俊一先生のベストセラー『臨床研究の道標』の副読本シリーズ第1作として出版された本書では,臨床疫学・臨床統計の専門家であり,なおかつ,臨床医としても活躍する著者(泌尿器科の指導医・専門医でもある)ならではの視点で,さまざまな角度から査読について述べられている.「そもそも査読とは何なのか」「良識ある査読者になるために」「査読は人のためならず」など,基本的だが重要かつ切実な話題から,最終章では「実践編」と題して,実際の論文を題材に「お作法」に沿って査読するプロセスが明快に再現される.箸休め的に書かれたコラムには,論文著者として誰もが経験する,いわゆる「トンデモ査読」の話や査読コメントへの対応の仕方など,興味をそそるトピックが読者を飽きさせない.そして,何より,全体を通して大変読みやすい.
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