書評
査読を制する者は論文を制する—医学論文査読のお作法
関口 美穂
1
1福島県立医科大学医学部附属実験動物研究施設・整形外科学講座
pp.306
発行日 2021年3月25日
Published Date 2021/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408201946
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
これまで,臨床研究と基礎研究の両分野において,査読者として他者の論文を査読することと,論文投稿で査読される側の両者を経験する機会がありました.しかしながら査読者として,系統立てて査読の方法を学ぶ機会はなく,一字一句を読みながら論文の筋道を確認し,適切な査読ができるように四苦八苦するものであると認識していました.本書との出会いにより,場数の経験に頼らない,系統立てて査読するお作法を学ぶことができ,視界が広がりました.
第1章は,査読とは何かと,査読者の役割についてわかりやすく解説されています.第2章では,論文の全体像を把握するために,査読のお作法6つのステップを提示し,要旨のまとめ方,研究デザインの型,主な統計解析が具体的に説明されています.第3章は,チェックリストを活用した系統的項目評価が解説されています.CONSORTやSTROBEなどのチェックリストを紹介し,科学的妥当性と再現性を評価するうえで著者が作成した査読用チェックリストが提示されています.また,バイアスと因果の評価について,詳しく解説されています.第4章はシートを用いた査読の実践内容となっています.「はじめに」の中で,内容が観察研究の査読を想定したものが中心であると述べていますが,研究の骨子は研究全般で共通する点でありますので,本書は,研究の種類にかかわらず,査読するポイントを学ぶことができます.また,本書から,知識の習得のみならず,実際の査読の際に,対応する項目を調べながら活用することができる充実した内容にもなっています.
Copyright © 2021, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.