Japanese
English
特集 皮膚疾患の電子顕微鏡像
基底細胞癌の電顕像
ELECTRON MICROSCOPICAL STUDY OF BASAL CELL CARCINOMA
荒尾 龍喜
1
,
桑原 宏始
1
Tatsuyoshi ARAO
1
,
Hiroshi KUWAHARA
1
1熊本大学医学部皮膚科教室
1Department of Dermatology, Kumamoto University School of Medicine
pp.395-401
発行日 1967年3月20日
Published Date 1967/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412200132
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
皮膚の基底細胞癌は皮膚に発生する悪性腫瘍の中でも比較的しばしばみられるものの1つで,腫瘍の組織像やその性格については一般によく知られるところである。しかしその組織発生には未だ多くの議論があり,表皮基底細胞説,毛母細胞説,皮膚付属器官の胎生迷芽説などの諸説があつて諸家の一致するところとなつていない。基底細胞癌の腫瘍細胞を電顕的に検索することは単にその超微細構造を知りうるのみならず,表皮細胞や各皮膚付属器官の上皮細胞,他の上皮性腫瘍細胞との比較検討から,腫瘍の組織発生を論ずる上においても有益な資料となるものと思われる。
われわれの観察した材料は症例1,72歳男子,前額に発生した色素沈着性基底細胞癌で,組織学的に腺様構造を示した腫瘍,症例2,80歳男子,右前額に生じた色素沈着性充実性基底細胞癌,症例3,61歳男子,鼻背に生じた色素沈着性充実性基底細胞癌の3例,および症例4,66歳男子の上口唇に生じた小指頭大の腫瘍で,組織学的に大部分は充実性ないし腺様構造をなした基底細胞様腫瘍細胞の増殖を示すが,数カ所に癌珠形成を認め,その周囲に明らかに棘細胞様腫瘍細胞の増殖があり,かりに基底棘細胞癌(basal squamous cellcarcinoma)と診断した1例を加え,以上の腫瘍の電顕像について述べることとする。症例1,2,4は切除後直ちに2.5%グルタールアルデヒド前固定,1%オスミウム酸固定,エポン包埋,症例3のみは切除後直ちに1%オスミウム酸固定,メタクリレート包埋をなし,いずれもLKB超ミクロトームで超薄切片作成,日立製中型電子顕微鏡で観察,写真撮影を行なつた。
Copyright © 1967, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.