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はじめに
鼻アレルギー患者の多くは「鼻アレルギー(花粉症)は治らない」という諦めをもっている。自然治癒を含め,減感作などの治療により鼻アレルギーの症状が消失し,内服薬などを用いた医療から解放された状態になることを治癒とすれば,確かにその数は少ない。また,治るという風説があれば,民間療法でも遠方より患者が集まるのも現実であり,患者の健康被害が生じたり,また水面下のトラブルも多いようである。年々増加し,難治化,重症化傾向があるといわれる本疾患に対し,適切な診断,治療を行うために日本アレルギー学会では「鼻アレルギー(含花粉症)の診断と治療」のガイドラインを設定している1)。このガイドラインには特に拘束力はないが,不適切な診断,治療が行われ,かつ患者の健康に不利益が生じた場合には,損害に対する責任の判断基準の1つとなる可能性がある。
ここでのテーマは,アレルギー検査のコツであるが,極論すれば施行する検査が患者の治療上必要かどうかである。患者と医師との良好な関係をつくっていくためには,医師は検査の意義,必要性,方法,結果の示す意味を患者に正確に,かつ,わかりやすく伝える必要がある。患者が病気を理解し医師を信頼してはじめて,生活全般にわたる改善や,治療に対しての意欲がもてる。治療が長期にわたる可能性がある本疾患では,ときに「治らない」という諦めからの脱落症例があり,われわれはこれらの症例を減らすために,患者に希望,目標を与え,根気よく治療が受けられるよう指導をしなければならない。技術的な検査のコツよりも検査のタイミングと検査の選択,患者指導への応用こそがアレルギー検査のポイントといえる。ガイドラインに掲げる目標「症状を抑え,長期寛解を維持し,患者の医療からの解放を目指す」の達成のために必要な治療計画と治療経過上の判断材料である検査に関して,その意義,選択のコツについて述べる。
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